レコーディングってどんなことやるの?
レコーディングは千差万別です。マイク一本使い1〜2時間程度で完結するナレーション録音から、多数のマイク、様々なアウトボード、膨大なプラグイン、時間もトータル数週間も掛かるロックバンドのアルバム製作や劇伴製作まで、ECHO FIELD Studioは、あらゆるレコーディングに対応いたします。しかし、どんなにシンプルであっても複雑であっても、Recording (録音) → Mixing (編集・加工・バランシング) → Mastering (仕上げ)という工程を辿り完成します。ここでは、Vocal、Guitar、Bass、Drumsの、ごくシンプルなロックバンドのレコーディングを例にとって説明いたします。
RECORDING
はじめが肝心 !
ここでキャプチャーされたサウンドが作品の質を決めます
打ち合わせ
レコーディングに当たって初めに行うことは打ち合わせです。
初めてECHO FIELDをご利用いただくお客様は当然のこと、何度もご利用くださっているお客様であっても、作品の方向性や嗜好を共有することがとても大切です。参考になるような、音源や映像を持ち寄り、相談しながら具体化してゆく作業も楽しいものです。
リズム録音
ドラムをブースに、コントロール・ルームにベース、仮ヴォーカル、ライン録音による仮ギターを、全員ヘッドホンを使用し、クリックを聞きながら録音します。
ここで本番テイクを収録するのは、ドラムとベースだけです。
やはりリズムセクションは、一緒に録った方が一体感も生まれ、よりグルーブ感のあるテイクが録れます。
しかも時間短縮にもなりますね。
クリック使用の場合、仮ギター&ヴォーカルは一回プレイすればOKです。
勿論、クリック無しや、リテイク、曲途中からのパンチインもOKです。
オーバーダビングその1
ギター録音
リズム録りが終わるとギターのオーバーダビング(オーバーダブ)です。
※稀にヴォーカルから先に録ることもあります。
オーバーダブは、録音済みのドラムとベースとクリックを聞きながら、ギターを順次録音してゆきます。
アレンジ構成によって、様々な音色を使い分けることが多いのがギターですので、音色ごとに分けて録ってゆきます。
それぞれアンプやマイキングを変えることで、よりイメージに近づき、サウンドグレードも上がります。基本的にアンプにマイキングして録音しますが、必要があればライン録音もします。
アコースティックギターは、基本、マイクだけで収音します。サウンドイメージに従いマイクを選び、使用本数を決めます。
他にキーボード等がある場合も、この辺りで録音することが多いです。
オーバーダビングその2
ヴォーカル録音
いよいよヴォーカル録音です。歌録りと言ったりしますね。
ヴォーカル録音は、リード・ヴォーカルとコーラスを録音してゆきます。順序はその時の都合で決めます。それぞれ、曲構成、アレンジに従い、話し合いながらパート数を決めます。
ヴォーカル録音において一番大事なことは、ヴォーカリストの不安を取り除くことです。勿論、他のパートも同様ですが、ヴォーカルは特に大事です。なぜなら、心理状態がそのまま声に出てしまうからです。なので適宜、コミニュケーションを録りながら、リラックスしていただくことが大事です。
次に、マイクセレクトです。声ほどマイクを選ぶパートはありません。ドラムやギター等は、ほぼ定番のセットで問題があることは稀ですが、ヴォーカルの場合、まさに十人十色、様々です。だからと言って、むやみに時間は掛けられませんから、素早く声質をつかみ、その声に相応しいマイクを選ばなければなりません。
ECHO FIELDには様々なマイクが揃っていますので、必ず貴方にぴったりのマイクが見つかることでしょう。
MIXING
色を塗り、陰影をつけ、空間を広げ・・・作品がはっきりと形を現します
【 編集 】
レコーディングが全て終了するとミキシングです。ここで、サウンドは整えられ様々に変容したりもします。まさに、ここが録音制作の本丸です。ミキシングの最初の工程は「編集」です。
編集とは、簡単にいうと、トラックのいらない部分やノイズをカットしたりする作業です。昔のテープと違い、DAWでは元データを傷つけることなく自由にカットできます。例えば、イントロが終わってサビまでドラムとベースが入らないような場合、その部分をばっさりカットしたり、ヴォーカルの声と声の間に入るリップノイズをカットしたりします。もちろん、一切のカットをせずにノイズも音楽のうち、というような音作りも有りです。ドラム等のタイミング合わせは、この段階で行うことが多いです。
この他、ワントラック通しで録ったギターも、曲の構成に従ってサウンドを変化させるためにトラックを分けたりします。こうすることで、各トラック毎にパンやプラグイン設定を変えることができ、後々作業が行い易くなります。音作りのための整理と準備といったところでしょうか。
【 バランシング 】
ミキシングの基礎であり肝、それがバランシング = バランスを取る、です。何のバランス?
それは、曲の完成イメージに従って・・
1.音量のバランス
2.左右のバランス
3.上下のバランス
4.前後のバランス
以上4つのバランスを、フェーダー(ボリューム)、パン(左右の音像定位変化)、この二つだけを使って各トラックのバランスを追い込んで行きます。
もちろん、より細やかに調整するためには、イコライザー、コンプレッサー、リバーブやディレイ、その他のプラグインを駆使しなければなりませんが、ギリギリまでフェーダーとパンだけ使ってバランスを取ることが大切です。
【 イコライジング 】
イコライジングの語源は、イコライズ = 等価する、です。あるべき姿に戻す、ということです。
何を? 周波数をです。
周波数とは、音の高低、音色を決める要素です。ロックやポップの録音のほとんどはオンマイクによるものです。これは、マイクが持つ特性(単一指向性)によって起こる近接効果によって、低域が持ち上がる効果を伴います。もちろん、これを利用もしますが、to Muchな部分もあります。そこで、そういう部分を取り除いたり、逆に足りない部分を補ったりする作業がイコライジングの基礎作業です。
イコライジングはそれだけには留まりません。より積極的サウンドメイクも行います。特定の周波数をばっさりカットしたり、逆に持ち上げたり、ビンテージ機材のエミュレーションを使って倍音を足したり、まさに、サウンドを色付けしてゆく作業です。
さて、イコライジングで何ができるのか?
1.トラック個々のサウンドを整える。周波数のデコボコを均す。
2.元々の音源が持つ上下の音像感を強調する。
3.原音からかけ離れた別の音色に染め直す。
4.マスターミックスの周波数バランスを整え、曲調、ジャンルに合わせた特徴を持たせる。
バランシングとイコライジングで、作品の全体像が姿を表します。
【 コンプレッション 】
コンプレッションとは、直訳すると圧縮する、という意味です。
音の大小、いわゆるダイナミクスを抑制することが役割です。
例えば、ヴォーカルが、Aメロは静かに囁くように歌い、ザビでは激しくシャウトしたとします。これを、全部聞こえるようにするためには、それに演奏が合わせる(音の大きさを)必要があります。(クラシック系ではそうなっています)しかし、ロックはそういうわけにはいきません。歌も演奏もある程度均一なダイナミクスの方がより気持ちよく聞こえます。録音する際にも、ダイナミクスが安定している方が歌い易かったりします。
コンプレッサーの効能は、これだけに留まりません。例えばロックミュージックに絶対必要なもの、それは迫力(ラウド感=音の大きさ強さ)です。ロックのライブサウンドは、まさに破壊的にラウド(うるさい)です。その巨大なサウンドで十分な迫力です。しかし、レコーディング作品はのラウド感は、聴く方の環境によります。巨大なサウンドシステムをお持ちの方から、携帯のイヤホンしかない方まで、全ての聴衆に可能な限り均等なサウンドイメージをお届けしなければなりません。コンプレッサーは、このラウド感をコントロールすることができます。
例えば、部屋いっぱいに鳴り響くドラムサウンドや、目の前に張り付くヴォーカル、粘りながらうねりまくるベース。こんなサウンドを、実際の音量にかかわらずコンプレッサーを使って演出できます。特にビンテージコンプの名機の多くは驚異的なサウンドを持ちます。さらには、特定の周波数域のみコンプレッションするダイナミックイコライザーや、周波数域を3〜5程度に分割し、それぞれ別々のコンプレッション処理を行うマルチバンドコンプレッション等、現代のレコーディングには不可欠です。
まとめますと・・・
1.ダイナミクスを制御してボリュームのデコボコを均し、聞きやすくする
2.ピークを潰しながらレベルを持ち上げ、前に張り付かせる
3.軽く歪ませながら激しく潰し迫力満点のサウンドに変貌させる
4.ピーキーな特定の周波数域のみをコンプレッションし聞きやすくする
5.周波数域を3〜5程度に分割し、それぞれ別々のコンプレッション処理を行い、
全体のサウンドバランスを整える
コンプレッサーを使用することで、サウンドは、滑らかに聞きやすくなったり迫力を増し刺激的にもなり、作品に性格を与えます。
【 空間処理 】
空間処理とは、広く感じさせたり、逆に狭く感じさせたりすることです。
これには、主に、リバーブやディレイを使用して演出します。コーラスやフランジャーのようなモジュレーション系エフェクトもよく使います。もちろん、イコライザーやコンプレッサー、パン、フェーダーも総動員します。
別の言い方をすれば、リアルな音場の再現とイメージの音場の創出、ということになるでしょう。
例えば、スタジオで録音したピアノを、まるで教会の中で演奏しているように、あるいは、響きゼロで録音したヴォーカルをバスルームで歌っているかのように、リアルな音場を与えることができます。イメージの音場とは、現実にはあり得ない宇宙空間に響くサウンド、とか、想像上の空間の響き、とかをイメージするまま創り出します。
もう一つの効果は、一つのサウンドをダブらせたり、揺らしたり、広げたりするモジュレーションです。代表的なエフェクトが、コーラス、フランジャー、フェイザーです。昔のアナログハードウェアとしては、トレモロ、レスリースピーカー、ADT(ビートルズのエンジニアたちが考案製作した、ダブラー/コーラスエフェクト)等ありまして、全てプラグイン化されています。
空間処理を施すことで、サウンドが広がったり逆に狭くなったり、あるいは、柔らかな雰囲気になったり不思議な感じにすることができます。更にはサウンド個々に別々の空間を与えたり、逆に全く与えなかったりすることもよくあります。まるで全てのサウンドが目の前に張り付くような・・・空間処理とは、作品に表情を与えること、と言って良いいいのではないでしょうか。
【 DAWミックスとアナログミックス 】
さあ、いよいよミキシングの最終工程です。
これまでの作業を施した作品は、音楽としてはほぼ完成しているはずです。ここからの作業は、非常に繊細で緻密な作業になります。
まず行うことは、レベル管理です。どんなに素晴らしい音楽的なミックスも意図しない歪みは必要ありません。マスターミックスアウトがレベルオーバーしていないかチェックします。必要であればバランスを取り直します。レベルが取れたら、マスターミックスにイコライザー、コンプレッサー、リミッターを刺してそれぞれ調整します。
このままPro Tools内でミックスしバウンス、もしくはマスターレコーダーへ録音しても構わないのですが、ECHO FIELDでは、16ch、8ステレオグループ程度に各トラックをまとめ、それぞれLynx Aurora 16 ADコンバーターへパラアウトし、アナログ変換後ハードウェア・コンプレッサー、マスターイコライザー、リミッターを通し、TASCAM DA-3000マスターレーコーダーへ録音することが多いです。それはやはり、アナログを通したサウンドの方が、良い、と感じることが多いからです。例えば「太さ」「滑らかさ」「エネルギー感」「奥行き感」等々・・・後々、マキシマイズした際も入れられるレベルに差が出ます。やはり一番は、音がまさに「そこにある」という「実存感」ではないでしょうか。今のところ、僅かではありますが、アナログにアドバンテージがあると言わざるを得ません。そして、ミックスファイルのサンプルレートに関わらず、この段階で最終データのサンプルレートで録音します。CDなら44.1kHz、映像なら48kHzです。サンプルレート変換をバウンス時に行うとレベルが変化しますし、それ以外にも変化している気がするからです。これもまたアナログミックスに拘る理由の一つです。もちろん、次の工程、マスタリング時にアナログ化して処理することもあります。
さて、ここまでの作業でミキシングは完成ですが、最終判断は当然お客様です。
出来上がったミックスを簡易的にマキシマイズ(音圧を上げる)し、お客様へお渡しして確認していただきます。直しがある場合は、1回目は何箇所でも無料にて行います。2回目以降は有料にて承ります。(一回につき5,000円 / 税別)
MASTERING
質感調整、音圧調整、比較、重箱の隅をつつくような作業を繰り返し・・
いよいよ完成です
【 プリ・マスタリング 】
近年、マスタリングの重要性が飛躍的に増大したといわれます。昔のマスタリングは、基本的には、曲順通りに並べ、局間を調整し、レコードカッティングに不具合が出ないようにコンプレッサー及びイコライザー処理を施す、というものでした。当時も、これによる音質差というものは存在し、議論されていました。例えば、USA(アメリカ)、UK(イギリス)、JAPAN(日本)ではレコードの音が違う !
現在では、そのようなことはありません。全世界共通のマスターファイルが使用されているからです。ただ、処理の内容は大幅に増え、ミックス直後とマスリング後では、まったく音が違うことは珍しくありません。それは、ミックスマスターを受け取った後、大胆なサウンド処理が行われるからです。その工程を、ここではPre-Masteringと言います。
ECHO FIELDでは、ミックスマスターをPro Toolsに読み込んでからプリ・マスタリング(Pre-Mastering)処理を施します。以下に、その内容を説明しましょう。
(ミックスファイルをお預かりしてマスタリングだけ承った場合は、一旦、アナログ処理することも多いです)
イコライジング
ミックス時にも、イコライザーは使用しますが、マスタリング時にも使います。
使い方としては、曲そのものの、に対してという部分と、アルバムのような複数曲が並ぶ場合、他の曲との整合性を合わせるために使います。
曲によっては、大胆な処理を施す場合もありますが、ほとんどの場合ほんの少し(せいぜい+-0.5〜1.5dB)の処理に止めます。使用するのは、ほとんどFabfilter Pro-Q3、iZotope Ozone 8等のプラグインです。もちろん必要あればアナログハードウェアEQも使います。
ここで一番大事なことは、どんなスピーカーで聴いても影響が出る部分を精査しピンポイントで処理することです。例えば、ハイが足りないな、と思っても安易にハイを上げたりはしません。その前に、マスキングしている部分がないか探してそこをカットした方が、結果良いことが多いようです。
コンプレッション / リミッティング (マキシマイズ)
コンプレッションは、ミックスでも十分使っていいるでしょうし、最終的にはリミッティング(マキシマイズ)処理も施しますので、ダイナミクスを抑制する方向で使うことはほぼありません。あるとすれば、通すことによるキャラ付けです。例えばUADのManley Vari MuやNeve 33609あたりは濃いアナログ感を持っていますので、必要があれば使います。
そして、レコード時代と最も大きな違いが、マキシマイズです。
現代の音楽は、一部のレコードを除きすべてデジタルデータです。デジタルには、これ以上は歪むという厳密な限界値があります。ところが、この限界を超えないまま音圧を上げられる、としたらどうでしょう。
これを可能にする機材が登場したのは1990年代初頭だったと思います。一つは、WAVES のLシリーズ等のプラグイン、そしてApogee ADコンバーターやt.c.electronic Finalizer等に搭載されたソフトリミッター、これらのお陰で音楽の音圧は飛躍的に高くなりました。それから約30年。まさにプラグインは百花繚乱。キャラが濃いものから、トランスペアレントなものまで、実に様々な高性能マキシマイザーが世に溢れています。ただ、完全なリミッターに思えたマキシマイザーですが、忘れてならないことがあります。インターサンプルピーク(トゥルーピーク)に対応しているか?ということです。これは、文字通り、サンプル間ピークというもので、アナログ化した際に姿を表す真のピークです。(トゥルーピーク)
難しい話はさておき、結果として、トゥルーピークに対応できないままマキシマイズすれば、いかにマキシマイザーでピークを止めてパソコン画面のメーターではOKでも、アナログ化した際に、このトゥルーピークが突出し音を歪ませてしまいます。
ECHO FIELDでは、厳選したプラグインを複数使い、インターサンプルピークを止めつつ、あくまでも自然に高音圧に作品を仕上げます。音圧を理想的に上げるためには、ミックス段階からの処理も非常に重要です。(マキシマイズ処理は、次の最終段、マスタリングソフトSteinberg WaveLabで行う場合もあります)しかし、ECHO FIELDの本意としましては、早くこの高音圧時代が終焉し、より音楽的なダイナミズムを持ったサウンドが好まれる時代になって欲しいと願っています。
【 書き出し – WAVとDDP 】
いよいよ作品完成も目前です。
ブリマスタリングで仕上げられたサウンドは、44KHz24Bit WAVにて書き出します。(この他のケースもございます)書き出したファイルを、Steinberg WaveLabに読み込み、マスタリングします。基本的には、既に音色、質感、音圧は完成されていますが、必要があれば、ここで再処理することもありますし、音圧=マキシマイズはここで決定されることも多いです。曲順を決定し、曲間を決め、音頭及び音尻を処理し、各々情報を打ち込み、最終的にディザで16bitに処理しつつ書き出します。
さて、ここまでの作業でマスタリングは完成ですが、最終判断は当然お客様です。出来上がったマスターをお客様へお渡しし、確認していただきます。直しがある場合は、1回目は何箇所でも無料にて行います。2回目以降は有料にて承ります。(一曲一回につき1,000円税別)
お客様からOKが出ましたら、お望みのファイルを書き出し、視聴用CD-Rと共に納品いたします。書き出すファイルは、WAV、DDP、MP3その他何でも可能です。
作品が完成しましたら
※WAVとは、音声データ記述のためのフォーマットです。ここでは、CDのデータ規格を指します。
※DDPとは、データファイル形式のCDプレス用マスターの納品フォーマットで、現在、CDプレス工場標準納品仕様です。
旧来の、CD-Rに音声データ(WAV)を焼き、またそこからリッピングするより、音声変化も、事故も少ないと言われています。