機材紹介
魅惑のアナログハードウェアの世界
録音とは、楽器と録音機材で行います。これだけデジタルが進化した現代ですが、音楽製作現場の最前線では、未だに70年近く昔のものから最新鋭のものまで、楽器も録音機材もアナログハードウェアが大活躍しています。最先端のデジタルプラグインとも共存しながら。
録音する目的に従って、楽器を選び、マイクを選び、プリアンプを選ぶことでサウンドの本質的な部分が決まってしまいます。もちろん、その殆どををデジタルソフトウェアで行う人もいるでしょう。しかし、ボーカルを始め、その全ての録音をアナログハードウェア無しにレコーディングすることはできません。
ハードウェアもピンキリで、一体何が正解か分からないことだらけですが、プロフェッショナルの厳格な目で、長い時間をかけ選び抜かれたものには、個人の技術や感性だけでは決して届かぬ深遠な世界があります。
ECHO FIELDにはそんな機材が揃っています。主な機材を紹介して参りましょう。
コンデンサーマイク
始めにご紹介するのは、サウンドの入り口、マイクロフォンです。マイクロフォンによる音の変化は劇的で、音色や音質を決定してしまう最重要アイテムです。ここで最適な組み合わせを見つけることこそが最良のサウンドへの近づく道です。中でも高音質で録音できるマイクの代名詞、それがコンデンサーマイクでしょう。最近は、かなりリーズナブルな価格のコンデンサーマイクもありますが、ここにあるもののほとんどは、まさにプロフェッショナルクオリティ。広帯域且つ高解像度。その鮮やか且つ芳醇なサウンドに耳を奪われることでしょう。
さらにリッチな質感を味わえる真空管マイクも複数取り揃えて、皆様のお越しをお待ちしております。
Neumann U87i 1976年製
U87Aiの前身です。1967年に製造開始され1986年にU87Aiにモデルチェンジするまで、世界中のスタジオであらゆる用途に使われた、まさに万能機です。
(厳密に言えば、初代87と87iは若干異なる。サウンドは個体差を除きほぼ同じ)
このマイクでボーカルを録ると、何故、世界中のスタジオにこのマイクがあるのかがよーくわかります。
何か特別なものがあるというわけではなく、とにかく置いて録ればそのままOKというか・・・
その上でノイマンならではの芳醇さや色気を感じます。
Aiに比べると、ゲインは落ちますが、より自然でより音楽的です。故に、今でも音楽系にはAiより使われる率が高いと思われます。
特性も10k付近の若干のピークを除きほぼフラットで、特にボーカルにはAiよりも遥かに適合率が高いです。
ECHO FIELDのU87iは、1976年に西ドイツで製造され、長いことスタジオで保管されていたペア(2本)です。使用頻度も低かったようで、とても良い状態のものが手に入りました。
しかも、シリアル連番です。
主な用途としては、ボーカルではファーストチョイスの一つで、ドラムアンビエンス、ピアノ、ブラス系では不動の定番です。。
Neumann U87Ai
世界中のスタジオに常備してある、まさにスタジオスタンダード“ノイマン U87 ”。
一口に87(ハチナナ)といっても、その長い歴史(1967年発表)の中で、U87 → U87i → U87Aiと、3回ほどモデルチェンジしています。Ai(エーアイ)は、三代目の現行品です。その芳醇かつ解像度の高いサウンドは圧倒的な信頼感があります。知る限り、最大クラスの感度を持ち、SNも非常に優れたマイクだと思います。
音色は、旧87と比べるとハイ上がり且つローが若干落ちた印象です。何にでも使えますが、ベストアイテムはやはり声関係。
ECHO FIELDでは、特にナレーションではマスト。他に、アコースティックギターでもよく使用します。ノイズもとても少なく、感度の高さを生かして、小さな音のSE(効果音)を余裕を持って録れることもこのマイクの優れた特質でしょう。
AKG C414B-ULS Stereo Set
ノイマンU87と並んで、永らくスタジオスタンダードとして君臨しているのが、このアカゲC-414です。
このC414も、1962年のC12A(C414の原型)発表されて以来、U87以上に現在まで何代にも渡って改良が施されてきました。
しかも同じ型番でもダイヤフラム変更等細かな違いがあり、全部でいくつあるのかさえわかりません。
ECHO FIELDのC414B-ULSは、1993年に発表されたC414B-ULSを2000年頃に、414史上最も人気の高かった、旧モデルC414EBと同じ外観にし、ステレオマッチドペアとして数量限定発売されたものです。これまた万能機で何にでも使えますが、87との違いを活かした使い方が多いようです。
414は87と比べると中域の密度や解像度で落ちるように思いますが、ハイがより滑らかです。
そして、距離が離れるに従ってハイが落ちてゆく(鈍る)U87とは違い、414はどこまでも安定しています。そして、87より圧倒的に高耐入力です。
そんな特徴を生かし、ドラムトップと、ライブレコーディング時のホールアンビエンスでは不動の定番です。
AKG C451EB
C414と並んで、AKGが誇る業界定番機です。414同様、AKGらしく綺麗に伸びたハイが特徴です。見た目通り細身のサウンドなので、自ずと用途も決まってきます。
用途は定番通り、ハイハットやシンバル、ウインドチャイム等の金物類やパーカッション小物、アコーステックギター等で使用することが多いです。
Soundeluxe U99(Tube)
Soundelux(サウンデラックス)とは、80年代から90年代にかけて西海岸と東海岸の名門スタジオ、オーシャンウェイ、ハイドストリート、ヒットファクトリーのチーフテクニカルエンジニアを担っていたDavid Bock(デヴィッド・ボック)が、ポストプロダクションスタジオSoundeluxに在籍時に“New Vintage Microphone Production”をコンセプトとし製造したマイクブランドです。
ビンテージマイクに造詣の深かったボック氏手作りによるマイクはいずれも評価が高いのですが、特にこのU99は、伝説の名機「Neumann U67」をモチーフにしており、多くのプロからも絶賛されている現代の名機です。
用途は、やはりなんといってもボーカルです。特にロックやポップスにはマストでしょう。
クイッと持ち上がったハイがあり存在感が際立つのに、ミッドハイは痛くないという、艶やかで艶かしい色気のある音色は中々経験できるものではないでしょう。
真空管も、名器中の名器と言われるTelefunken EF806S NOSを搭載し、皆様をお待ちしております。
Bock Audio U195
Soundeluxを退いたデビッド・ボックが自らの名前を冠したマイクブランドがBock Audio(ボックオーディオ)です。
※詳細はこちらを参照
http://abendrot-int.co.jp/bockaudio/
U195は、U87等と同様FETを用いたコンデンサーマイクです。
Fat/Nomal切り替えスイッチがあり、メーカー説明によると、それぞれ、Fat = U87、Nomal = U89というサウンドイメージらしいですが、あくまでも主観ですが、あんまり似ているとは思いません。
ただし、コンデンサーマイクとしての性能になんら問題があるわけではなく、少々ハイ上がりながら高解像度で高品位な質感を持っているマイクです。
特にFatポジションは、非常に太く且つ抜けよく解像度も高く、バスドラム(外)やベースアンプにはデフォルトです。
故に、U87&89イメージというよりU47-fetイメージといった方がふさわしいように思います。
Peluso 22 47SE(Tube)
アメリカの新興マイクメーカー“Peluso = ペルーソ” ここもBock Audio同様、古き良きビンテージマイクを現代によみがえらせるべく奮闘しているメーカーです。この「22 47SE」も、その名の通り、伝説の名機「Neumann U47tube」をモチーフにした真空管マイクです。
心臓部の真空管には、もはや手に入らないオリジナルチューブVF-14の代替品としてアメリカ製の6SJ7と言うメタル菅を採用しています。
派手なU99と比べ、落ち着いた雰囲気を持つのが22 47SEです。勿論、抜けも良く真空管らしい色気もあり、これまた素晴らしいマイクです。
用途としてはやはりボーカルでしょう。他にはナイロン弦ギターの指弾きとも相性ばっちりです。
ECHO FIELDでは、Neumann U87i、Soundeluxe U99、Peluso 22 47SEの中から、あなたの声によりベストマッチなマイクを選ぶということも可能です。
ぜひ、お試しください。
SONY C37A(Tube)
SONY C37Aが生まれたのは1958年、国産初のコンデンサーマイクとして造られました。このマイクは、アメリカを始め、世界中で使用され、今なお世界の名機として名を馳せています。
まさに日本が生んだレジェンドですね。
その音は、常に日本製につきまとう評価「色気がない」を一蹴するもので、とても艶やかで色気のあるものです。
ECHO FIELD所有のC37Aは、若干ロー抜けしているものの、大変状態も良く、特に女性ボーカルには相性が良いです。
ぜひ、ジャパンビンテージの艶やかな音色を楽しんでいただきたいと思います。
SONY C38B
漫才マイク、と言った方がわかりやすいでしょう。
しかし、その正体は、ほぼ何にでも使える万能機です。
その昔、地方ではNeumannやAKGは、高嶺の花、絵に描いた餅、届かぬ夢でしかありませんでした。そんな時代、その全ての場面で大活躍したのが、SONY C38Bです。
日本製のためでしょうか、三味線や琴といった邦楽器には相性が良いようです。
個人的には、ドラムやパーカッションの皮ものにベストマッチだと思います。
Microtech Gefell UMT70S
Microtech Gefell(マイクロテックゲッフェル)は、旧東ドイツのメーカーです。そもそも、あのノイマンと同系列の会社だったようで、多くの技術を共有しているようです。またまたその昔、相当な円高(1$=80円程度)だった頃、海外製品がかなりお安くなったので購入できた逸品です。
ネットも何もない頃、専門誌で見た「Neumann U47 tubeと同じダイヤフラム(M7)を搭載している、という宣伝文句一文で購入決定しました。
実際似ているかどうか確かめる術などないのですが、ノイマンと似た濃密な中域を持ち、高品位かつ解像度高くローノイズな、品質の高いマイクであることは間違いありません。
ノイマンに比べると、ローが少なくその分ミッドハイが盛り上がっている感じです。簡単に言うと少々硬い音色です。
柔らかい声の方やスネア、ナイロン弦ギター等まだまだ活躍できるマイクです。
RODE NT2
ECHO FIELDが初めて購入した海外製(オーストラリア製)コンデンサーマイクです。
現在RODEは、ハイコスパなコンデンサーマイクの代名詞となっていますが、入ってきた当時は購入価格約60,000円もしました。
しかし、それでも国産のC38Bの半額以下ということで音も聞かずに購入しました。
RODEマイクの特徴は、何と言っても、透明感もありつつもザラッとしたハイ上がりのシャキシャキトーンですが、このNT2もその元祖として同様の特徴を持っています。
しかし、当時のフルアナログ環境と90年代初頭という、まだまだ派手でギンギンサウンド時代にはぴったりでした。
ボーカル全般、アコースティッギター、ドラムトップ、ピアノ、なんでも使いました。今はさすがに出番は減りましたが、70S同様、その質感が必要な場面のためにスタンバイ状態です。
現在も、モデルチェンジを経てNT2-Aとして現行品です。更に価格が下がり、初心者でも十分手の届く定番機として今後も活躍を続けることでしょう。
ダイナミックマイク
それほど広くない帯域且つフラットでない特性。しかも感度も低い。しかし、機構が単純で電池や電源も不要、丈夫で湿度にも強く、また大音量でも歪みにくい。このよう相反する特徴が、このマイクの良いところでもあります。その個性的なサウンドが、より声や楽器にマッチする場合があります。
また、手頃な価格かつ頑強な筐体は、数を必要とし過酷な環境が多いPAの現場では必要不可欠です。
Shure SM58
ゴッパー !ステージボーカルマイクの代名詞 !
スタジオマイクの基準がNeumann U87だとすると、Shure SM58は、まさにライブステージマイクの基準。
1966年に生まれて以来、途切れることなく生産され続けてきました。
まさにその名の通り「Shure=信頼」です。
しかし、スタジオマイクとしてはどうでしょう?
勿論、その音質、性能を活かした場所に使います。
ドラムの皮ものやギターアンプのサウンド、よりアグレッシブなロックボーカル等、兄弟機SM57と共に、少々荒いサウンドを求める場面にはベストチョイスです。
因みに、ECHO FIELD所有の58の中には、1982年頃に購入したMaide in USAもあります。巷の噂通り、現行品との音質差がどれほどのものか、ご自分の耳で検証されるのも一興でしょう。
Shure SM57
兄弟機、Shure SM58とほぼ同じ特徴を持ちますが、若干そのサウンドは違います。グリルボールがある為か、58の方が若干太い感じがします。
このマイクも、ボーカル、ドラム、エレキギター、パーカッション・・・etc
何にでも使える万能機です。
基本、声系に使うことが多い58に対し、57は、やはり楽器系に使います。ドラムのスネアやタム、ギターアンプには絶対定番です。
Shure SM7B
ラジオDJ御用達だったSM5と、ステージでは定番になっていたSM57のいいとこ取りの改良を施して1976年に生まれたのがSM7で、SM7Bはその後継機です。
用途は、やはりラジオDJ御用達ですが、ダイナミックマイクとは思えないフラットな周波数特性を持っている上、ダイナミックらしくコンデンサーとは違うハイの柔らかさをも持っています。
こういう特質が、名匠ブルース・スェディン等に愛され、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を始めとする数々の名盤に使用されています。「67キラー」などという異名さえあるようです。
ECHO FIELDでも、ロック系のパワフルなボーカルには好んで使用しています。
ヘヴィロック・シンガーにはマストでしょう。
※67とは、あの伝説のビンテージチューブマイク Neumann U67です。
Sennheiser MD421mk2
このSennheiser = ゼンハイザーと言うドイツ製のマイクも、
Shure SM58や57同様、何十年にもわたり業界定番の位置をキープしている名機です。
業界では、その外観から「クジラ」と言う愛称でお馴染みです。
用途は、SM57とほぼ同じ。好みに応じて使い分けています。音質の違いは、57より中低域に膨らみがあり、アタックのミッドハイやハイにも若干の違いがあります。昔は、低音用の定番でしたが、実際、低域はあまり拾いません。
ECHO FIELDでは、定石通りタムとギターアンプに使います。
面白いのは、アメリカ製のアンプ(フェンダー)にはSM57、ヨーロッパ製のアンプ(マーシャルやボックス)には、このMD421を使うことが多いです。
Sennheiser E906
このマイクは、エレキギターアンプ専用と言っても過言ではないでしょう。
長年にわたり定番として君臨してきた、Shure SM57及びSennheiser MD421に代わるものとして登場しました。
その特徴は、定番57、421は、どちらもエッジ部分が強調されハイもしっかり拾います。その分、ガッツリ歪んだマーシャル等の大型チュープアンプでは、ともすれば耳に痛いサウンドになりがちでした。当然これをEQで処理するわけですが、このE906にはこの痛さがありません。よりミッドが豊かなサウンドです。
まさにギターアンプ録音の新定番と呼べる一品です。
audio-technica ATM25
その昔、キック(バスドラム)用のマイクといえば、レコーディングなら、Sennheiser MD421+Neumann U47fetもしくはAKG D12、またはElectro-VoiceのRE20、PAならSennheiser MD421が定番でした。
スタジオオープン当時持っていたのはMD421のみです。
しかし、このマイクではどうしてもローが寂しかったので、SONY C38Bを47fetの代用として使っていました。
ただ、好みの感じにはならないため毎回四苦八苦してキックのサウンドメイクに取り組んていた思い出があります。
そんな時に出たのが、このaudio-technica ATM25です。
デモを取り寄せ聞くなり即決でした。
それからずっと、レコーディング、PA共にキックマイクの定番です。他にも、Shure Beta52、AKG D112を使ったり、外側マイクも色々変遷しましたが、結局現在はこれ一本になりました。
ECHO FIELDでは、不動のバスドラマイクです。
マイクプリアンプ
マイクロフォンと並んで、作品の音質や質感を決定する大変重要なアイテムです。マイクロフォンがキャプチャーし送出できる信号レベルは大変小さい為、適切なレベルに引き上げる必要があります。そこで必要なのがマイクプリアンプです。
つまり、マイクプリアンプとは、マイクロフォンでピックアップされた信号を単に増幅するためだけのものです。今や、わずか数千円のミキサーにさえも搭載されているものです。
ところが、アナログ機材の面白いところは、この単純な機能を構成するパーツや回路設計により、そのサウンドは実に複雑な変化を見せます。その差は、マイクほどはっきり分かるものではありませんが、マイクの質感差がキャプチャーする相手の本質を引き出すものとすれば、マイクプリは、その質感の違いが作品の質感、ひいては音楽ジャンルにさえ影響する機材です。ECHO FIELDには十分なクオリティかつ質感差のあるマイクプリを複数取り揃えています。
Rupert Neve Designs Portico 5024
レコーディング世界のレジェンド、ルパート・ニーブ氏が率い自らの名前を冠したメーカー“ Rupert Neve Designs ” が放った渾身の一台。1Uに4chのマイクプリを擁し、そのうち2chにはDI、残り2chにはM+Sデコーダーを搭載実に多機能且つ実用的な一台。勿論、サウンドも最高。ニーブらしい太さと音像のデカさだけでなく、現代的な鮮やかさや抜けも素晴らしくノイズの少なさも特筆ものです。ニーブ氏拘りのインアウトに配された特別設計のトランスのお陰か非常に歪みにくいのも特徴です(若くは歪みが判りにくい)。ゲインは72dbあり、ノイズの低さも相まってリボンマイクのようにゲインの低いマイクでも充分収音可能です。どんな音源にも安心して使えますが、特にドラムには必須です。ECHO FIELDのメインマイクプリです。
付属のDIについて。いわゆるマイクプリのおまけ程度のものなどでは決してなく、それ単体でも充分なクオリティ及び質感を有するものです。マイクプリ同様、太くかつ解像度高く抜けよく、しかもどことなく柔らかさをも感じる音質になっております。Avalon Design U5とはまさに好敵手です。用途はライン楽器なら何にでも使えますが、やはり、ベースがマストでしょう。U5と比較してよりふさわしい方をチョイスします。
※伝説のNeveサウンド。
ルパート・ニーブ氏が1961年にイギリスで設立したスタジオ機器専門ブランドがNeve Electronicで、そこで製造されたミキシングコンソール、イコライザー、コンプレッサー等の卓越したサウンドを指します。現在に至るまでその価値は不変で、未だに世界中のスタジオで使い続けられている超名機です。数多くのクローンが存在しますが、やはり70年代のオリジナルは別格のようです。残念ながら、筆者は70年代のオリジナルを使用したことはありません。最も近いといわれる、オリジナルの設計者でもあるジェフ・タンナー氏のAURORA AUDIO GTP8をドラムセットに使った感触だと、評判通り太くかつ抜けも良いのですが、アタックが程よく丸まり(鈍る)、耳に痛くない実に気持ちの良いサウンドです。「あ〜聞いたことある」既視感ならぬ既聴感があります。ただ、この質感が邪魔をする場面もあるでしょう。さて、肝心のPortico5024との違いですが、基本的な質感に多くの類似点がある中、大きな違いがアタック(トランジェント)に対する振る舞いです。適度に鈍るところが良さでもあるGTP(OLD NEVE?)に対して、ほぼリニアに反応します。より現代的と言えますし、より万能型、とも言えるでしょう。理想的には両方必要です。
Grace Design m201
GRACE Designとは、アメリカを代表するプロオーディオ・カンパニーの一つです。
このm201は、メーカーの顔とも言えるマイクプリアンプです。
非常にハイファイかつピュアなサウンドで有名です。それだけでなく力強さもありながら圧倒的に高解像度でノイズレスです。
世界中のあらゆる音響現場で活躍しています。色付けの少なさからよりピュアなサウンドを求めるクラシック録音やジャズの録音現場で使われることが多いようです。
2chで、DIとM+Sデコーダー、リボンマイクに対応した、よりハイゲインなリボンマイクモードを搭載しています。
また、トランスレスのためか、より輪郭が自然に感じます。同時にピークに弱く、超えるとわかりやすく歪みます。
むしろ、この特徴を生かして、決して歪ませたくないクラシック系の録音では重宝します。
ECHO FIELDでも、クラシック系のピアノ、フルート等に使うことが多いです。
付属のDIは、Portico 5024同様おまけなどではなくマイクプリ同様の透明で繊細かつ力強さもあるとても優れた音質です。何にでも使えますがその透明な質感を生かしてキーボードやエレアコ等に、よりフィットするでしょう。
Avalon Design Vt737Sp
これも、レコーディング業界定番の名機です。
長年にわたり、チャンネルストリップの名機として君臨してきました。
真空管による増幅回路を持つマイクプリ、ソリッドステート回路によるEQとコンプ。この三つを併せ持ちます。
高解像度、ハイスピード、透明感を実現するために、ソリッドステート、クラスAフルディスクリートアンプを採用してきたAvalon Design初の真空管マイクプリアンプです。
Avalonらしく非常にハイファイかつ、真空管ならではのきらびやかな倍音を持ちつつもタイトかつ量感のあるローエンド、しかもどこか丸みを帯びたその質感は誰もが好きになることでしょう。その後に控えるオプトコンプレッサーとイコライザーはAvalonの真骨頂、ソリッドステート、クラスAフルディスクリート回路になっており、Avalonらしく力強く透明感あふれるものです。オプトコンプはどんなに深く掛けても自然な質感を失わず、イコライザーはハイファイかつ非常に効きが良くQが広めなためザックリと処理することに向いています。
さすがAvalonだけに、どこを取っても死角なしです。
特に相性の良いNeumann U87iとで録るボーカルは、業界定番の一つです。
搭載されているDIも同じような質感を持ちます。同じAvalonのU5と比べると、真空管を使用しているためか、スピード感に劣ります。マッタリとした質感がありますので、テンポがゆっくりした指弾きベースに合います。
適材適所です。
Universal Audio LA-610MkII
1950年代より、プロオーディオ業界で輝き続けるレジェンドメーカーです。
創業者、ビル・パットナム・シニアは天才エンジニアで、様々なスタジオ機器を発明しました。
本機、LA-610MkIIもビルが作り上げた伝説のマイクプリアンプ610を忠実に再現したマイクプリに、これまた彼の作品である、名機の誉れ高いオプトコンプレッサーTeletronix LA-2と同じ方式のコンプレッサーを一体化した真空管式チャンネルストリップです。これも非常に音楽的に優れた音質を持つ機材です。
同じ真空管式のAvalon Vt737Spとは趣の違う質感を持ちます。
LA-610MKIIは、計5個の真空管をマイクプリ、コンプそれぞれに使っていますので、マイクプリのみに真空管1本しか使っていないVt737Spとは違いが出るのは当然でしょう。
どちらかと言えば、より真空管らしく暖かい音色です。さらに、ゲイン設定によりサウンドの質感を変えることができます。アウトを絞りインプットを上げることで真空管をドライブさせよりファットにすることも、これと逆の操作をすることでよりクリアーなサウンドを得ることもできます。
LA-2A同様のコンプレッサーは緩やかで自然な効きのコンプレッションモードとアタックが早くよりアグレッシブに効くリッミターモードがあります。用途に応じて使い分けます。
ゲインは高いですが、ECHO FIELDにある他のマイクプリに比べるとノイズは多いです。
この機種にもDIがあります。
やはり、その質感はマイクプリ同様です。その時の状況に応じてチョイスします。
DI (ダイレクトボックス)
DIとは、Direct Injection Boxの略です。DBとは略しません。
エレキベースやシンセサイザー等のキーボードには必須アイテムですねステージ経験がおありの方にはお馴染みです。必要な意味については長くなりますので割愛しますが、簡単に言いますと、ライン楽器を直接(アンプスピーカーを通さない)録音したい、あるいはPAコンソールへ繋ぎたい場合に必要になります。
当然、ここでピックアップされた信号がその楽器の音質音色を決定しますので、品質の差がもろに出る部分でもありマイクロフォンと同様大変重要なアイテムです。
BOSS DI-1
日本が誇る、エフェクターメーカー “ BOSS ” が放つDIです。もはや、Countryman Type85と並び、DIのスタンダードと言ってもいいでしょう。柔らかな質感をもつType85と違い、音質的な特徴はほとんどなく無味無臭。それがDI-1の良いところでもあります。必要充分な音質と機能、頑丈な躯体と安価。用途はライン楽器なら何でも大丈夫ですが、ECHO FIELDでは主にキーボード関連に使用しています。
Avalon Design U5
ピュアオーディオメーカーの代名詞の一つ “ Avalon Design ” が送り出したDIです。Maid in USAです。
Avalonの魅力とは、見た目通りの、まさにゴージャスかつハイパークオリティな質感です。別な言い方をすれば、あくまでも透明かつ重厚、柔と言うより剛。そして、圧倒的にハイスピードです。特にローの速さは特筆ものです。
その、圧倒的な質感により、レコーディング、PA問わずスタンダードになっています。
用途は、やはりベースが鉄板です。特にロックやポップスにはマストです。その煌びやかで歪み少なく、ローが速い質感はスラップにもばっちりフィットします。勿論、エレアコのライン収音にもマストです。
Rupert Neve Designs Portico 5024
※マイクプリアンプの章 “ Rupert Neve Designs Portico 5024 ” を参照お願いいたします。
GRACE Design m201
※マイクプリアンプの章 “ GRACE Design m201 ” を参照お願いいたします。
Avalon Design Vt737Sp
※マイクプリアンプの章 “ Avalon Design Vt737Sp ” を参照お願いいたします。
Universal Audio LA-610MkII
※マイクプリアンプの章 “ Universal Audio LA-610MkII ” を参照お願いいたします。
コンプレッサー
コンプレッサーとは、音のダイナミクス(強弱)をコントロールする機材。レベルが上下するサウンドを、設定したレベル(スレッショルドレベル)を境に、そこ以上に上がったレベルを、設定された圧縮比(レシオ)に従ってレベルを制御します。これにより、録音するサウンドのピークを制御したり、ミックス全体を均したりします。面白いことに、その構成回路によってサウンドは大きく変わります。その代表的なものが、OPT(光学式)、FET(トランジスタ式)、VCA回路式、そして真空管式です。
これらの特徴をうまく使うことで、実に豊かな音楽表現が可能になります。
Urei 1178
Urei(ウーレイ )1178は、Universal Audioを興したビル・パットナム・シニアによって作られたFETを用いたステレオコンプレッサーです。現在、既に廃盤で、この個体は1980年代のものです。FET(フェット)タイプの特徴は、とにかくアタックタイムが早く、より積極的な音作りができること。もちろんセッティング次第でよりナチュラルにすることも可能ですが、真骨頂は、その激しく個性溢れるサウンドでしょう。
この1178のモノラルバージョンである1176と共に世界中のスタジオで無いところは無いと言える、
コンプレッサーの代名詞です。Urei 1176は製造された年代ごとにリビジョンがあり、それぞれサウンドも外観も異なります。リビジョンはA〜Hまであり、この1178は1176のリビジョンHのステレオバージョンになります。ステレオバージョンがあるのはリビジョンHだけです。
その特徴は、しっかりダイナミクスを制御しつつ音が前に出てくるところ、軽くコンプしただけで音が締まるように変化するところ、です。インプットを上げ、歪ませつつ激しくコンプレッションすることで得られる嵐のようなサウンドも非常に有名です。
これは、ダイナミクスの制御、という本来の役割のみならず、より積極的にサウンドを変化させるエフェクター、と言っても良いでしょう。これら特徴あるサウンドは、そこらの安価なVCAコンプレッサーでは逆立ちしても出ません。
素晴らしい特徴あるサウンドだけでなく、簡単な操作で思った通りのサウンドが得られる点において他の追従を許さない事が、1966年に登場以来、現在に至るまでプロオーディオ業界の第一線で使われ続けている所以でしょう。Ureiというメーカー自体が、1985年に創業者パットナム氏がJBLへ譲渡し、事実上終焉しましたので、1178最後の生産も1985年だと思われます。何れにしても、数十年も経た古い機材が、メーカーが無くなってもなお生き続け使われ続けているという事実こそが、この機材の真価を証明していると思います。
最近、非常に優れたモデリング・プラグインもありますが、やはり、本家ハードウェアには一味も二味も違う旨味があり、特に録音時には必要不可欠なものとしてこれからも活躍を続ける事でしょう。
用途は、それこそ何にでも使えますが、特にボーカルは、録音時は当然のこと、ミックス時もここぞと言う場面では必ず使います。歌い手さんにとっても非常に気持ちよく歌えるサウンドになり、ひいては、より良いボーカルテイクになること間違いありません。
どうぞECHO FIELD Studioにて伝説の名機を堪能していただきたいと思います。
Empirical Labs EL8-X Distressor
Empirical(エンピリカル) Labs EL8-X Distressor(ディストレッサー)。
1993年に登場するや否や瞬く間に世界中のスタジオに浸透した現代の名機です。何方式なのかは不明です(笑)“世界で最も売れたスタジオ機器”とも言われています。
メーカー宣伝には、「本物のアナログ倍音を制御、様々なビンテージコンプのサウンドまで再現。アナログの質感を自在に操ることが可能です。 完璧にデジタルコントロールされた、本物のアナログ回路はプリセットされ、様々な組合せによってあらゆるアナログサウンドを作り出します。トランス/真空 管/テープコンプなどの2次/3次倍音成分は0.025%の微量から20%まで適量をアドオンする事が出きます(Distortion Indicatorで視覚的に判断できます)。またビルトインされたサイドチェインEQによるHPF&エンファシス、8つのユニークなRATIO カーブの組合わせは384パターンもの音色をセット可能です。更にATACK、RELEASE、IN&OUTゲインの4つのノブによってクリーンサウンドから過激なクラシックサウンドまで、まさに無限大のサウンドを生み出します。」とあります。これらの機能により、名機と謳われるビンテージ・コンプレッサーのエミュレーションが可能という事も強調されています。つまり、光学式だろうがFET式だろうが真空管式だろうが何でもOKと言うことのようです。
実際に使ってみると、エミュレーション云々より、単純にサウンドが良い事にすぐに気が付きます。
巷間言われているように、Urei 1176の進化系と言って間違いないと思います。1176のように、自然なコンプレッションから強烈に潰したサウンド、どれも実に音楽的で使えるサウンドです。
そして、どんなにリダクションしていてもサウンドが遠くに行かないところ、操作がいたって簡単なところも似ています。
違いは、潰して行くに従って、ハイが若干鈍り太くなる1178に対して、どこまでもリニアに潰れ、音色が1178のように変化しないため、より激しいサウンドになるのがディストレッサーです。
用途は、1178同様、ボーカルをはじめ何にでも使えますが、よりアグレッシブなサウンドが欲しい時に使う事が多いです。
DANGEROUS MUSIC Dangerous Compressor
DANGEROUS(デンジャラス)MUSICは、長年にわたり「ヒットファクトリー」「マスターディスク」「スターリングサウンド」といった世界的なスタジオでイクイップメント・デザイナーとして活躍してきたクリス・ムスによって設立されました。
「オーディオ品質に関しては一切の妥協を排除する」
という理念に基づき製造された機材は、どれも高品質で高音質です。
本機も、その驚異的スペックに驚かされます。
このDangerous Compressorは、いわゆるBus Compressor、マスタリング用途やステレオミックス用のVCAコンプレッサーです。
その音質は、理念通り非常に高解像度でクリアーですが、パワフル且つ粘りもあります。
機能的にも、これまでなかった左右均等な反応を見せる “ステレオ・カップリング” 、名前の通り、非常にナチュラルにダイナミクスを纏め上げる “スマート・ダイナミクス” 等々・・・
1178やDistressorのように激しく潰れる事もありませんので、あくまでも原音の質感を壊さず、しっかり纏め上げ一体感を出すマスターバスにこそ相応しい逸品です。
ECHO FIELDでは、低レシオかつ少リダクションにてマスターバス専用機として使っています。
それだけで、サウンドをグッと引き締めた上でマッシブにしてくれる頼もしいヤツです。
最近のブラグインの高音質化には目を見張るものがありますが、コンプレッサーに関しては、まだ優れたアナログ・ハードウェアの質感、実存感には及びません。
TK-Audio BC1-mk2
TK-Audio(ティーケーオーディオ)とはスウェーデンにあるプロユース・オーディオメーカーです。
BC1-mk2は、マスターバスコンプの名機SSL G-Buss CompをイメージしたVCAバスコンプです。
そのサウンドは、非常にクリアで、特にリリースの音切れがスムーズで美しく、どんなに激しく潰しても破綻しません。まさにバスコンプです。
機能面でも、各パラメーターは全てクリック式で、ハイパスサイドチェーン、Wet/Dry(元音とエフェクト音のバランス)、と必要充分。
SSL Buss CompのUAD版との比較では、やはり、奥行き感や輪郭においてハードウェアであるBC1-mk2に軍配が上がりますが、その振る舞いは非常に似ていました。
ECHO FIELDでの使用法は、ドラムレコーディング時のステレオアンビエンスに、ミキシング時のドラムミックスバスに、ほぼステレオバスに使用しています。
この使い方が「魔法の粘り」とも評されるそのサウンドを最も堪能できるからです。
dbx 162SL
Ureiと並ぶコンプレサー界の二大巨頭dbx。
FETの代表的コンプのUreiに対し、VCAの代表と言ったらdbxと言って間違い無いでしょう。内蔵するVCAは自社開発です。
この162SLは、2000年代の初頭、上位機種160SLと共に久しぶりに発売された高級機種です。
かつて、160、165という現在でも世界中のスタジオに使われ続けている名機を生み出したdbxも、中国製の低価格品が大量に市場に溢れる渦中に飲み込まれ、安価な機種を連発していた時代もありました。
その流れに楔を打ち込むべく登場した162SLですが、その気合が、ルックス、中身に溢れています。
特にルックスは非常に豪華で、高級機そのものです。どちらかと言わずとも、見た目がチープな(中身は素晴らしい)Ureiとは対照的です。
サウンド的には、JENSENのアウトプットトランスの恩恵もあるのか、どこまでも抜けが良くクリアーです。ここでも、ワイルドな必殺技を持つUreiとは真逆の印象です。ドラムミックスを歪ませながらバシバシに潰す、アタック早くピークを制御しながら前に出す、なんてことは不得意です。どんな掛け方をしても、クリアサウンドを保ちながらどこか上品です。では、何が得意なのか? それは三つあります。
1.ナチュラルに滑らかにコンプレッションする。
2.エレキギターのカッティング等にパクーンといった印象的なコンプを掛ける。
3.ソフトクリップが非常に優れているので、Peak Stop Plusを使ってLimiterとして使用する
ECHO FIELDでは、アナログミックスの最終段に、Limiterとして使っています。歪むこともなく、確実にピークを止めることができます。
イコライザー
まるで、絵の具と絵筆のような・・あるいはナイフやノミのような・・
音に色をつけたり、輪郭をつけたり削ったり・・
ここで紹介するイコライザー = EQは、マスター専用のものです。
ちょっと輝かせてみたり、迫力を出したり、作品全体を滑らかに仕上げます。
TK-Audio TK-Lizer
TK-Lizer(ティーケーライザー)は、ミックスダウン時やマスタリング時にマスターに使用する、いわゆる仕上げ用のイコライザーです。
イコライザーは、コンプレッサーと違い、アナログハードウェアならではのアドバンテージというものはそれほどありません。
元々、マスターバスに使用するイコライザーには、極力透明な音質で、位相特性に優れ、圧倒的にローノイズな特性が求められています。これは、どちらかと言えばデジタルの得意分野であり、しかも圧倒的にローコストです。
そこらのアナログイコライザーでは全く太刀打ちできません。
しかし、このTK-Lizerのような機材になりますと、やはりアナログ特有のサウンドの魅力、というものがあります。
例えば、プラグインEQと、TK-Lizerの10kHzを同じく2dB上げても、印象は結構違います。
違うだけでは導入には至りませんが、より魅力的に感じましたので導入に至りました。
TK-Lizerは、3Band EQ / HPF(ハイパスフィルター) / +-4dBレベルコントロールがあり、それぞれ+-0.5dB、1dB、2dB、3dBというように0.5〜1dB間隔のクリックになっていて、再現性も高く、とても使いやすいです。
さらに、最近デフォルトになっているM+Sモードもあります。
ECHO FIELDでは、特にロックバンドもののミックスはほとんどアナログサミングしますが、その際、デンジャラス・コンプレッサーと共に、このティーケイライザーを100%使用しています。
スタジオモニター
まさに音の定規。あるいは眼鏡。歪んでいたり、曇っていてはダメなんです。
正確なモニターの存在こそが、スタジオにとって最も重要です。
目が見えなければ正確な絵は描けないのと同じです。
Mackie HR-824mk2
正確なモニター。実は、なかなか無いのが現実です。
元々、従来のスピーカーでは、正確な周波数を再現することはかなり難しい上、音というものは部屋の反響に大きな影響を受けるからです。予算というのも重要です。
長年の定番だったYAMAHA NS-10Mは、使い過ぎてすっかり飽きていましたし、何より80Hzあたりですっぱり切れているため低音域の処理にとても困っていました。
下から上までフラットに見渡せるモニター、創業以来悩みのタネでした。
そんな中見つけたものが、このMackie HR824mk2です。
Mackie(マッキー)といえば、低価格ながら驚くべき高音質で一世風靡したミキサーで一躍有名になった会社です。正直なところ、スタジオモニターとしてはそれほど期待していたわけではありませんでした。ところが、試聴した瞬間、それが杞憂だったとわかりました。
このHR824mk2もまた、社風のまま、ソコソコの価格で、かなりの高性能を達成しています。決して楽しめる音質ではありませんが、十分見えるスピーカーです。
低域は、30Hzまで確認でき、高域は余裕で20kHz超まで再生する上、中域より上はほぼフラットです。パワーも十分で、バンド録音の際も爆音で楽しめます。低域も、補正をかけてはいますがほぼフラットな特性を達成しています。
ECHO FIELDのメインモニターです。これを導入して以来、低域が見えない、という長年の悩みから解放されましたし、より自信を持ってお客様へマスターミックスをお渡しできる様になりました。
GENELEC 8020C
スタジオモニターの代名詞的メーカー、GENELEC(ジェネレック)。
1978年、フィンランドで創業されました。特徴は、それまでのスタジオモニターを大きく変革する、内臓マルチ・アンプ・ドライブ方式です。これにより、位相歪みの軽減や各々のチャンネルに特化した回路設計などを行えます。
そんなウンチクはさておき、さすがに有名ブランド、
わずか H = 210mm W = 135mm D = 140mm の小さな筐体からは信じられない爆音が飛び出します。しかも広帯域です。そのサウンドは、一言で言うと「派手」。
ドンシャリ感のある音質です。しかし、そこらの小型スピーカーとは一味も二味も違う解像度の高さと魅力があります。世界的名器のサウンドを確認する意味でも重要です。
ECHO FIELDでは、セカンドモニターとして無くてははならない存在です。
SONY ZS-M5
日本を代表する世界的企業SONY。
国産初のテープレコーダー開発という、まぎれもない音響機器メーカーとして出発したSONYも、もはや一体なんの会社なのか分からないほど何でもやる会社になってしまいました。
そんなSONYが音響に力を入れていた2〜30年ほど昔、おそらく1990年代に発売されたと思われるのが本機、ZS-M5です。
いわゆる「ラジカセ」で、日本中のスタジオに置かれています。
機能は、CD / MD / Radio Tuner / を備えています。
しかし、それらの機能を使うことは稀です。
これは、いわゆる、一般視聴者。つまりお客様の試聴環境の一つを想定したモニターとして使うことがほとんどです。
つまり、第三のモニターというわけです。
ミックスの最終点は、どんな環境においても、大きな差がない音作りです。
そこで、エンジニアは、信頼できる基準になるモニターでミキシングしつつ、常に様々な環境でテストを繰り返しながら仕上げてゆきます。
そんな数多くの現場の中で信頼を勝ち得て残ってきたのが、このZS-M5です。
ECHO FIELDでも、ミキシングやマスタリングのの途中で幾度となくお世話になっています。
楽器 & アンプ
良いサウンドを手に入れるはじめの一歩が楽器です。
ECHO FIELD Studioをご利用される方は、全て無料で使用できます。
YAMAHA Recording Custom
& Zildjian Cymbal
Drum Set
バンドサウンドの要はドラムサウンドです。
音楽的にも音響的にもドラムサウンドは楽曲の質感やグルーヴ感、時代性をも左右します。
YAMAHA Drumsの最高峰、名器の誉れ高いYD9000の後継、レコーディングカスタムシリーズです。この個体は、1985年頃の製造で、材はオールバーチです。
非常に素直なサウンドで、どんなジャンルにもフィットします。
シンバルは、落ち着いた音色で定番のジルジャンです。
BD22″x16″ FT 16″x15″ TT 13”×12 TT 12″x10″ TT 12″x8″ SD14″x5.5″
H.Hat 14” Ride 20” Crash 15” Crash 18”
Martin 000-28
Acoustic Guitar
アコギのトップブランドの一つMartin(マーティン)社。1833年にドイツからアメリカに移住したクリスチャン・フレデリック・マーティンによって創業されました。
000-28(トリプルオー28)は、1902年に発表されました。なんと100年以上も昔のことです。元々は、貴婦人がお茶を飲みながら爪弾くためのギターだったとか。だから小ぶりなんですね。
100年以上も生産され続けている000-28ですが、人気が爆発したのは、1992年MTVの番組「アンプラグド(アコーステック楽器のみで演奏)」に、エリック・クラプトンがこの000-28をひっさげて登場してから、と言って間違いないと思います。
そのサウンドは、マーティンらしく、煌びやかで、サスティーンも充分、特に指弾きの柔らかさや、コードを鳴らした時のなんとも言えない広がりと美しさはマーティンだけのものです。
ぜひECHO FIELD Studioでご体験ください。
Gibson Les Paul Standard
Electric Guitar
ギブソン・レスポール・スタンダード。
バンドやっている方には、もはや説明不要でしょう。
使用したレジェンドギタリストは数知れず。ネーミングそのものになったレス・ポール、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、デュアン・オールマン、ゲイリー・ムーア、スラッシュ・・etc。
そのサウンドは、ハムバッカーピックアップによる非常にパワフルかつウォームなもので、特にマーシャルアンプとの組み合わせは最高で、歪ませたサウンドの分厚さ、エッジ感、サスティーンがロックを発展させたと言っても過言ではないでしょう。
ECHO FIELDのレス・ポールは、1980年代に作られた59年ものを模したリイシューです。
Fender Customshop Stratcaster ’60th
Electric Guitar
フェンター・ストラトキャスター。このギターもギブソン・レスポールと並び、ロックギターのアイコンです。これまた愛用したレジェンドギタリストも、ストラトキャスターの真の価値を見出し可能性を押し広げた天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスを始め、数知れず。
ストラトキャスターには年代ごとに様々なモデルがあり、ルックスも仕様も少しづつ違います。しかし、基本的サウンドはどのモデルも共通したものがあります。
その特徴は、ローパワーなシングルコイルらしく、ジャキジャキと歯切れよく鋭いものから、ウォームかつクリアなものまで、三つのシングルコイルピックアップの組み合わせによる広帯域で多彩なトーンです。
特にカッティングやアルペジオにはもってこいです。もちろん、ドライブペダルやハイゲインアンプを使用しての歪んだトーンもレスポールとはまた違った魅力があります。
トレモロアームによるトリッキーなプレイも魅力ですね。
ECHO FIELDのストラトはFender社最上級製品を製造するCustomshop製の1963年頃のストラトキャスターを忠実に再現したモデルです。
PRS Custom 22
Electric Guitar
PRS=ポール・リード・スミスという一人の若者が1984年に始めたギター工房です。
ギターの基本をしっかり押さえた上で、数々の斬新なアイディアを詰め込んだ彼のギターは、カルロス・サンタナを始め多くの有名ギタリストに支持され、やがて世界中へ広がっていきました。
PRSギターの特徴は、乱暴な言い方をすれば、レスポールとストラトキャスターのいいとこ取りでしょう。
レスポール同様、メイプルトップとマホガニーバックにパワフルなハムバッカーピックアップを乗せ、ストラトのようにアームがあり、プレイアビリティが高く、レスポールよりずっと軽い・・そして、精緻な作り込みからくる個体ごとのばらつきの無さ。しかも、コイルタップ付きピックアップで独自のシングルコイルトーンまで可能です。ほぼ欠点らしきものがないと言っていいギターです。
ECHO FIELDのPRSは、Custom 22といい、22フレットのものです。
レスポールやストラトを弾きなれた方なら非常に弾きやすいのではないでしょうか。
Pedals
Stomp Box
エレキギターのお供といえばこれでしょう。
プロ、アマ問わず、ギタリストの足元にはカラフルな小さなBOXがたくさん並んでいますね。
ありとあらゆるサウンドを出せるStomp Boxですし、かつてはかなりの数を収集しました。
しかし、長年の間に淘汰され、どうしても必要だと感じたものだけが残りました。
ワウワウとブースター系ドライブが多いですね。
伝説のグリーンやイエローのドライブはもちろん、これまた伝説のワウワウのクローン・・・
意外に若い方の足元には見かけないものだと思います。
特にドライブ系は、チューブアンプとの相性が素晴らしいので、ぜひ体感していただきたいと思います。
因みに、真ん中のオレンジ色。Maxonフェイザーは、オーナーが1977年に初めて購入したStomp Boxです。
Guitar & Bass Amp
古のビンテージの魅力
Marshall Super Lead 1959 1971年製
ロックはマーシャルとともに進化した !
そう言い切っても過言ではないでしょう。
イギリスはロンドンの楽器店主だったジム・マーシャル(元ドラマー)が、店に出入りするミュージシャンのために、スタッフと共に作り上げたのがJTM45というアンプでした。
このFender Bassmanの回路を元にしたアンプは瞬く間に多くのギタリストを虜にしました。
開発のきっかけになったThe WHOのピート・タウンジェントを始め、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、デュアン・オールマン、リッチー・ブラックモア、アンガス・ヤング、ヴァン・ヘイレン・・・
およそロックギタリストといわれるほとんどがマーシャルを使ったと言ってもいいでしょう。
Marshall Super Lead 1959という機種は100W仕様のもので、マーシャル史上最も有名で、ヴィンテージマーシャルの代名詞とも言える名機です。1967年頃に発表され幾多の改良を経ながら1981年頃まで製造されました。
中でも、1973年までのものは、ポイント・トゥ・ポイント ハンドワイヤード(手配線)で製作され、非常に評価が高いです。
ECHO FIELDのMarshall 1959は、1971年製です。
71年製は、特によく歪むといわれ、とても人気があります。
しかも、サウンドの決め手の一つ「真空管」も、パワー管に、当時のオリジナルに最も近いと言われるSvetlana EL34 × 4。
プリ管には、オリジナルと全く同じ、60年代の貴重なMullardo ECC83 NOS × 3を搭載しています。
そのサウンドの特徴は、バイト感、スピード感、音圧、トーン、迫力、どれもこれも凄まじく、ボリュームを上げるにつれて歪みも大きくなり、太さも増していき、ギターのボリュームを下げるに連れどんどんクリアに煌びやかに変化していきます。
こんな陳腐な言葉などでは、このアンプの魅力は到底表現できません。とにかく百聞は一見にしかず、いや、百見は一聴にしかず、ぜひご自分の耳でこのスーパーサウンドをご体験ください。
Fender Twin Reverb 1980年製
マーシャル1959が、歪みの王様なら、フェンダー・ツインリバーブは、クリーンの王様でしょう。
その、どこまでもクリスタルクリーンかつ暖かいサウンドもまた、音楽には無くてはならないものです。フェンダーアンプは元々よく歪むアンプでした。
世界初のエレクトリック・ギターを生み出したレオ・フェンダーが最初期に作り上げたアンプシリーズ、「ツイード・アンプ」がそれです。
マーシャルアンプの祖となった、ツイード・ベースマンもその一つです。
やがてロックがあらゆるジャンルを飲み込んでゆく中、次第に歪まないアンプも求められるようになり、それに連れフェンダーアンプもどんどんクリーンになって行きました。ある意味その集大成が、このツイン・リバーブです。
因みに、フェンダーはアメリカの楽器メーカーですが、1973年に早々とポイント・トゥ・ポイント ハンドワイヤードを廃止したイギリスのマーシャルと違い、1983年までは頑なにポイント・トゥ・ポイント ハンドワイヤードを続けました。
ECHO FIELDのツイン・リバーブは最終期のもので、マスターボリュームが付き、130Wという大出力も相まって、さらにクリーンです。もちろん、ポイント・トゥ・ポイント ハンドワイヤードです。
当然ながら、同じフェンダーのストラトとの相性も最高で、突き抜ける鋭さと暖かさを併せ持ち、どこまでもクリーンなサウンドは、カッティングやアルペジオには最高です。
VOX AC30CCX
VOXは、アメリカでレオ・フェンダーがツイード・シリーズを発表した頃、イギリスで楽器店を営んでいたトム・ジェニングスと演奏の傍らアンプの設計も行っていた設計者ディック・デニーの二人によって創設されたJMI Corporationに端を発します。
VOXを代表する名アンプ、AC30/6 twinが発表されたのは1961年のことでした。
このAC30こそ、その発表直後に登場し、あっと言う間に世界を席巻したTHE BEATLSと共にあったアンプです。
サウンドの特徴は「グラッシートーン」と呼ばれる、まるでガラスが割れるような非常にブリリアントなトーンにあります。
もちろんトレブルを下げて、柔らかくメローなサウンドもお手の物です。
そしてボリュームを上げてゆくと、良質なドライブトーンも得られます。
これは、マーシャルのそれともフェンダー・ツイードとも違う独特なものです。
マーシャルほど歪みませんが、グラッシートーンを残したまま、気持ちの良いコンプレッション感とバイト感があるクランチサウンドは、まさにブリティッシュ・トーンと呼ばれるにふさわしいものです。
使用アーティストもビートルズを始め数知れず。
最も有名なAC30使いといえば、やはり、Queenのブライアン・メイでしょう。自作のレッド・スペシャルと共に、デビュー以来40年以上一度も浮気することなくAC30一筋です。
また、現代の名アンプといわれるMachiress(マッチレス)と、そこから派生したBad Cat(バッドキャット)が、このVOX AC30に範をとっているといわれています。
ECHO FIELDのAC30CCは、クラシックカスタムシリーズと銘打たれた、昔のAC30の良いところを残し現代的な改良(より歪みます)もほどこしたバージョンです。
オリジナルAC30同様セレッション・アルニコブルー×2を搭載している点も魅力です。
最も頻度の高い使い方は、その独特なクランチトーンによるコードカッティングとアルペジオでしょう。
現代のJ-POP & ROCKにもジャストフィットです。
Roland Jazz Chourus JC120 1985年製
日本を代表するギターアンプ、JC120。
まさに、アメリカとイギリスの独壇場であるギターアンプ市場で、日本製としてはほぼ唯一世界中で使われているアンプです。
発表されたのは1975年。世界初のコーラス・エフェクトを搭載しての登場でした。
聞いたこともない美しさと不思議な空間表現を持つコーラスサウンドに世界中のミュージシャンが魅了されました。それから現在まで、ほぼ何も変わることなく作り続けられています。
そういう意味では世界唯一と言ってもいいのではないでしょうか?
そんなJC120ですが、持ち味はコーラス・エフェクトだけではありません。
このアンプの最も支持されている点は、実はコーラスではなく、その独自のクリーンサウンドだと思います。
これまでご紹介してきたアンプは全て真空管性のものでしたが、このJC120はトランジスタ製です。
クリーンの王様、ツイン・リバーブとも違う独自のクリーンサウンドは、間違いなくトランジスタに負うところが大きいのだと思います。
この独自性こそが世界中で支持された理由なのではないでしょうか。
そしてもう一つ、ストンプボックスとの相性が抜群だということです。
ECHO FIELDのJC120は、変化がないと言われるJC120の中でも音が良いとの評判もある80年代のものです。
JC120のクリーンが必要な方、自慢のペダルをお持ちの方はぜひ !
Fender Bassman 50 1972年製
ベースマン、その名の通りベースアンプです。
このページでも何度か出てきた名前ですが、それは、このアンプの祖、ツイード・ベースマンです。同じペースマンでもその出音はかなり違います。
(ツイード・ベースマンは、歪みやすく小口径スピーカーも相まって、ベース向きとというより、やはりギター向きと言えるでしょう)
この、通称銀パネは、フェンダーアンプの終焉期に出たもので、アンダーライン付きロゴタイプのものは銀パネの最初期1968年頃から1973年までを表しています。この年代のベースマンは、ビートルズの、あの、ルーフトップライブ(映画 Let It Beの中で行われる屋上ライブ)でポール・マッカートニーが使っていました。
そのサウンドの特徴は、ボンボンブンブンと、いかにもベースらしいものです。
50Wという低出力も相まって歪みやすく、それがまた魅力です。もちろんバキバキのスラップなどには全く向きません。そして、ベースマンの遺伝子通り、ギターに使っても素晴らしいです。ツイン・リバーブとは違う図太さが素晴らしいです。
ECHO FIELDでは、主に、ベースのリ・アンプに使います。
指弾きピック弾き問わず、ロックやポップスには抜群のトーンを与えてくれる魔法の箱です。
ちょっとぼんやりしたベースラインも生き返り、しっかりと芯を出してくれます。
ギターのクリーンに使っても、ツインリバーブより太いサウンドで、必要な場合重宝します。
Bogner Alchemist
モダン・ハイゲインアンプのトップブランド、“ Bogner ボグナー ” が、デジタルモデリングのLine 6と組んで放ったのが、このAlchemist アルケミストです。
Bognerは、ドイツからアメリカのLAに渡ってきたラインホルト・ボグナーが1989年に興したアンプブランドです。自ら改造したマーシャルJCM800を片手に渡ってきたということです。
Bognerのアンプとしては中〜低価格帯のものですから、さすがに質は落ちますが、そこは天下のBogner、クリーンにしてもドライブサウンドにしても、しっかり標準は超えています。
クリーンサウンドは、いわゆるフェンダータイプと言っていい、太くて暖かいものです。
ブライトスイッチ、クランチスイッチ等を組み合わせればかなり応用幅の広いサウンドも出ます。
ドライブサウンドは、さすがにBognerらしい分厚く十分なゲイン幅があります。
ローパワーなストラトでもかなりのドライブサウンドを楽しめます。
マーシャルと比べると、ザクザクしたトーンではなく、マイルドで甘いトーンです。
それと、Line 6が開発したデジタルエフェクター、リバーブ&ディレイが非常に良いです。
フェンダーに代表されるスプリング・リバーブも味があっていいですが、実用本位に考えるとこちらの方が良いと思います。
使いどころを選びますが、マーシャルと違う、と言う点がECHO FIELDが導入した理由でもあります。